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魔法少女まどかマギカ世界の人口変化の考察

 

「食物連鎖って知ってるよね? 学校で習ったはずよ。魔女は弱い人間を食らう。私たち魔法少女は魔女を食らう。そういうことよ」

-杏子(きょうこ)第5

 

 杏子が暗に言及したように、魔法少女、魔女及び一般の人間の関係は、自然界における食物連鎖に代表されるようなものではある。しかしながら、魔法少女と魔女は特殊な関係性を帯びており、単純な捕食-被食方程式では表せない。魔法少女のソウルジェムが完全に暗黒化すると、彼女は魔女として生まれ変わる(第8話参照)。この関係性は、両者の人口により複雑な結果をもたらし、標準的な人口モデルを当てはめることができない。このため、こうした魔法生物の人口推移を適切に分析するには、新たな人口モデルを的確に構築する必要がある。

 

 


●モデルの仮定条件

魔法少女、魔女ともに彼女らの人口は一般人類人口より引き出される。計算の単純化のため、彼女らの人口は人類人口に対して無視できるオーダーであり、人類人口は彼女らの活動による減少が無視できると仮定する。

 魔法少女人口は、キュゥべえが新たに契約した少女数だけ増加し、死亡または魔女化しただけ減少する。魔女人口は魔女が持つ使い魔が魔女化した数、および魔法少女が魔女化した数だけ増加するが、魔法少女によって倒された数だけ減少する。これより、下記の変数を仮定すればよいと考えられる。

 

M(t):時刻tにおける魔法少女数(自然数)

W(t):時刻tにおける魔女数(自然数)

C:単位時間当たりのキュゥべえと少女との契約数(自然数)

D:単位時間あたりの魔法少女死亡確率(パーセンテージ)

B:単位時間あたりの魔法少女の魔女化確率(パーセンテージ)

K:単位時間当たりの魔女の被殺害確率(パーセンテージ)

F:単位時間当たりに使い魔が魔女化する数(正の有理数)

 

 

(1)単純モデル

 

 単純な数学モデルを定義する(詳細は以下に示す)。単純モデルでは、魔法少女の死亡確率、魔女化確率、及び魔女殺害確率は、魔女人口に対して独立であるとする。これにより、計算を単純化し、微分方程式についての閉形式解が得られる。これらの仮定に基づき、人口式は以下のように定義される。

 

(ΔM(t)M、即ち魔法少女の増減数。ΔW(t)W、即ち魔女の増減数)

 

シミュレーション

変数について適切と考えられる値での、単純モデルの100単位時間での結果

C = 100, D = 0.25, B = 0.125, B = 0.125, F = 0.015, K = 0.12

M(1) = 0, W(1) = 0

 ,

 用いた値は任意に定めたものであるが、適切であるよう選択している。変数の値を変化させると、異なった曲線が得られるが、一般的な人口の振る舞いには影響しない。

 

人口の平衡点

 魔法少女と魔女、両者が平衡点に達するならば、両者の人口は変化しなくなる[ΔM(t) = 0 & ΔW(t) = 0]。即ち、一定期間に新たに契約される魔法少女の数と、死亡または魔女化する数は一致する[C = (D + B)M(t)]。さらに使い魔が魔女化する数は、魔法少女が寄与する数に一致する[F*W(t) = (K - B)M(t)]

 

     平衡点において、魔法少女人口は、C/(B + D)に等しい。

     平衡点において、魔女人口は、(B - K)M(t)である。M(t)が平衡点にあるならば、魔女人口は、C((B - K)/(B + D))である。

 

一般解

 このモデルでの魔女と魔法少女人口についての一般解は、α、βをある定数として以下の通り。

 

 

 魔女と魔法少女がキュゥべえの文明よりもたらされるものであると仮定すると、両者の初期人口は0である[M(0) = 0 W(0) = 0]。このときのW(t)M(t)は以下の通り。

 

 

結論と所見

     魔法少女の死亡は魔女化しなかったことを意味する。キュゥべえの目的は魔法少女の魔女化よりエネルギーを得ることであり、魔法少女の死亡は、その契約に要した時間が無駄であったことを意味する。こうしたキュゥべえにとって有益であるのは、ほとんどの魔女が魔法少女より弱いことであり、魔法少女の死亡確率を下げることである[K > B]

     仮に魔法少女が魔女より強いとするならば、標準的な魔法少女は死亡するまでに複数の魔女を殺害することになる[K - B > 0]。このことから、魔女を作るための、別の方法が必要となる。キュゥべえが魔法少女の魔女化によるエネルギーのみにこだわっているにもかかわらず、使い魔が魔女化するという仕組みが存在していることが説明可能である。

     最初に何人の魔法少女がいたか、あるいはC, D及びBの値にかかわらず、魔法少女人口は、C/(B + D)で平衡する。その人口はキュゥべえが新たな少女と契約する能力に依存しており、このことより、魔法少女が少ないことが説明できる可能性がある。

     最初に大変に多数の魔法少女がいたとしても、最終的にその人口はC/(B + D)まで減少し、そこで安定する。これは、その直線的な増加、環境圧力または人口密集圧力ということからくる当然の結果である。

     これとは対照的に、魔女人口は平衡点に達することがない。魔女進行は当初、増減しはするが、不可避的に使い魔による増加が他の要素に対して圧倒的になり、その人口はついには指数関数的な人口爆発を引き起こす。実際問題として、魔女活動による普通人類の人口減少が、最終的に魔女人口増加に歯止めをかけるのではあるが、その時点でこのモデルでの仮定条件は破綻する。

     以上のことにより、どんな惑星であれ、このような魔法少女と魔女が存在するならば、滅亡は不可避である。このことから、第4時間軸においてキュゥべえがあっさりと地球を放棄し、惑星の持続可能な開発を試みなかったことが説明できる可能性がある。

 

改善案

 

 単純モデルにより説明できるのは、マギカ宇宙におけるある特質群である。しかし、いくつかの状況では破綻してしまう、一般化しすぎた仮定を持つという困難を抱えている。いくつかの改善を施して、これらの問題に対処することを試みる。残念ながら、こうした改善をモデルで記述すると、より複雑な微分方程式を必要とし、解析的に一般解を導くことはできず、シミュレーションに頼るよりほかなくなる。

 

 

2)魔女人口の依存性

 

 まず、魔法少女人口が大幅に魔女人口を上回っている場合を考察する[M(t) > W(t)]。もし、周囲に魔女が多くないのであれば、魔法少女はどうやって魔法を使い魔女を倒すような機会が得られるであろうか? 魔女が豊富に周囲に存在する場合と比較してみれば、明らかに、魔法少女が死ぬ、あるいは魔女化することは少なくなる。こうした状況において、変数B, K, Dはその時点での魔法少女の数に依存するよりも、むしろその時点での魔女の数に依存する。このような前提に立つと、ΔM(t)とΔW(t)は以下のように再定義され得る。

 

min(W(t),M(t))は、W(t),M(t)のうち小さいほうという意味)

 

シミュレーション

 このモデルでの500単位時間のシミュレーション。変数には適切な値を用いている。

 

C = 100, D = 0.200, B = 0.100, F = 0.015, K = 0.096

M(0) = 0, W(0) = 1

, ,

 

 

所見

     このモデルでは、ΔW(t)W(t)が小さい場合には、W(t)のみに依存する。それゆえ、魔女数の初期値は0であってはならない。そうでない場合は、魔法少女は決して魔女化せず、魔女人口は常に安定して0である。キュゥべえは、そうした最初の1人の魔女をワルプルギスの夜と名づけた可能性が考えられる。

     もし、F + B - Kがマイナスであれば、作られる魔女の数(魔法少女の魔女化と使い魔の魔女化)は、魔法少女により殺害される魔女の数より小さい。そのような展開においては、魔女人口W(t)は、常に絶滅し、魔法少女人口は直線的に増加する。それに加えて、単純モデルでK - B > 0、次いでF > K -Bであると結論したのであるから、これらのことが示すのは、単位時間に魔女が殺害される数よりも、使い魔が魔女化する数が大きくなければならないということである。魔女がこうした急速な絶滅という可能性に対処するには、魚類や昆虫で見られる集団産卵と似た進化論的戦略を採用する必要性に迫られる。もし、どの魔女も十分な数の魔女化し得る使い魔を持っているなら、より多くの使い魔の魔女化の確率が増大する。このことは、どの魔女の隠れ家にも非常に多くの使い魔がいることを、説明し得るかもしれない。

     人口の推移は二つの期間に大別される。

1.      最初は、魔法少女の数は、ほぼ直線的に増加する。魔女はほとんどいないのであり、魔法少女が死ぬことはほとんどない。キュゥべえは、一定の早さで魔法少女契約を続けるので、当然、増加率はほぼ一定である。戦闘は少ないため、ソウルジェムの暗黒化は緩やかであり、魔女化する魔法少女はごく少ない。魔法少女人口は、時刻t = (ln C - ln(D + B))/(F+ B - K)のときに、最大のtC - C/(F + B + K)ほどとなる。

2.      グラフで魔女人口が初めて魔法少女人口を超える時点(図では、およそ時刻t = 300)において、増大する魔女狩りの機会が魔法少女に影響を及ぼし始める。魔法少女の人口増加は緩やかになっていき、さらに減少に転じる。魔女人口は加速的に増大していく。最終的に、魔法少女人口はC/(D + B)という平衡点で安定する。この時点以降、魔女人口は指数関数的に増大していく。


単純モデルとの比較

 単純モデルでは、上記の最初の期間を持つことができず、非常に早い時期に破綻している。しかしながら、それに続く期間では、単純モデルの時間をずらしたに過ぎないものが解となっている。それゆえ、単純モデル破綻の時期こそ遅らせているとはいえ、単純モデルで得られた結論は有効である。

 

 

3)緩やかな暗黒化

 

 ソウルジェムが時間経過とともに次第に濁って輝きが失せていくことは、明示的には述べてこなかった。本研究において、このことは何らかの示唆を与える可能性がある。ソウルジェムと肉体の間との結びつきについては、第6話において、常に密接な関連があり、距離制限があることを見ることができる。この結びつきが魔法的に本質的であり、ソウルジェムの力が少しずつではあるが失われていくと理解することは、十分な説得性がある。このことにより、キュゥべえは魔女の初期値を0とする、あるいは魔女を直接作るという非正規の能力なしに、計画を開始することができる。時間経過とともに、魔法少女が自然に魔女化する確率をTとする。すると、式は以下のようになる。

 

 

シミュレーション

 K < B + Fであるならば、このモデルは2番目のモデルと同様になる。K > B + Fであるなら、以下のような結果を得ることができる。

 

@ K > B + F Tは小さい値の場合

C = 100, D = 0.4, B = 0.15, F = 0.01, K = 0.165, T = 0.0001

M(0) = 0, W(0) = 0

 

A K < B + F2番目の考察と同様になってしまう場合(図は対数グラフ)

C = 10, D = 0.01, B = 0.1, F = 0.5, K = 0.2, T = 0.0001

M(0) = 0, W(0) = 0

 

B 本モデルの@と似たような場合(図は対数グラフ)

C = 10, D = 0.01, B = 0.1, F = 0.05, K = 0.2, T = 0.0001

M(0) = 0, W(0) = 0

 

C 本モデルの最初のものと似たような場合であるが、Tが大きい(図は対数グラフ)

C = 10, D = 0.01, B = 0.1, F = 0.5, K = 0.2, T = 0.01

M(0) = 0, W(0) = 0

 

 

所見

 このモデルでの人口推移は、どのシミュレーションにおいても、変数の値と初期値に非常に敏感である。

 

     魔女人口が決して大幅に魔法少女人口を超えない特別な場合においては、W(t)M(t)は、最終的に平衡状態に達し、
  W(t) = C/(D + K - F), M(t) = C/T×(K _ F - B)/D + K - F)
となる。

     そうでない場合は魔法少女人口は最終的にM(t) = C/(D + B + T)で平衡状態となり、W(t)は指数関数的に増大していく。この状況は、単純モデルの一般解と似ている。

 

 特別な場合の展開はキュゥべえをして、惑星を破滅させることなく持続可能な開発を達成し得る方法を与えているが、そのような状況は極めて不安定で暴走に陥りやすい。

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